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2026年10月10日(土)、岐阜市役所12階 第1研修室にて、一般社団法人こども環境デザインの設立記念講演会「あなたはあなたで大丈夫。」〜子どもの育ちを支える環境とは〜 を開催しました。

講師にお迎えしたのは、明星大学教育学部教授の星山麻木先生。運動会やお祭りが重なる秋の土曜日、そして神奈川県鎌倉市から岐阜市まで足を運んでくださった星山先生と、岐阜をはじめ各地からお集まりいただいた参加者のみなさまに、心より御礼申し上げます。

当日は、代表理事の杉本からの団体紹介に続いて、星山先生に約1時間のご講演をいただきました。この記事では、その内容の一部をご紹介します。

マイクを持って話す星山麻木先生
ご講演中の星山麻木先生(2026年10月10日/岐阜市役所)

子どもを変えるのではなく、環境を変える

はじめに、2026年9月に活動を始めた当団体の紹介をさせていただきました。

スクリーンに「子どもを変えるのではなく、環境を変える。」と表示された会場の様子
冒頭に、代表理事の杉本より団体の考えと目指すことをご説明しました。当日は約40名の方にご参加いただきました

私たちが掲げているコンセプトは「子どもを変えるのではなく、環境を変える。」です。「環境」というと大きな話に聞こえるかもしれませんが、私たちが見ているのは、もっと身近な場所にあるものです。

たとえば、試合に負けて帰ってきた子どもに、どんな言葉をかけるか。通知表を持ち帰ってきた子どもに、何と言うか。正解のない問いですが、こうしたことをじっくり学んだり考えたりする機会は、意外なほど少ないのではないでしょうか。環境とは、そういう目の前のことだと考えています。

そのうえで、当団体が目指すこととして次の3つをお話ししました。

  1. 子どもを支える人、子どもが頼れる人を増やす教室で先生がひとりで30人、40人の子どもを見ている状況では、すべての子どもが頼れる相手を見つけることは難しい。子どもが頼れる人の「選択肢」を増やしたいと考えています。
  2. 時間・空間・仲間を増やすこの3つの「間」が子どもたちから減っていると言われます。けれどそれは、保護者や先生方も同じではないでしょうか。大人の側の幸せな時間・空間・仲間を増やすことにも取り組みます。
  3. 子どもではなく、子どものまわりの環境を変える環境には、人も、もの(教材・道具・本棚など)も、場所も含まれます。
マイクを持って団体紹介をする代表理事の杉本
設立の経緯と、私たちが目指す3つのことをお話ししました

また、私たちは「こども環境デザイン」と同時に「おとな環境デザイン」も進めていきたいと考えています。子どもの問題に見えていることの多くは、実は大人の環境の問題でもあります。不登校のお子さんの支援に関わる中で、保護者の方自身が孤立や不安を抱え、働き方を変えざるを得なくなる場面を何度も見てきました。子どもの支援とともに、あるいはそれよりも先に、保護者の支援が必要だと感じています。

当団体は、2018年に岐阜市役所教育委員会で机を並べていた4人が、それぞれ別の分野で働きながら再結集して立ち上げた団体です。4人とも、教員ではなく行政職員として教育に関わってきました。だからこそ、子どものまわりの環境に目を向けて整えていくというアプローチを選びました。

星山麻木先生のご講演より

資料を手に話す星山麻木先生と会場の様子
資料を示しながら、ご自身の40年の歩みからお話しいただきました

「子どもだけの話ではない」と気づいた40年

星山先生は、療育と特別支援の指導法を専門とする実践研究者です。この道に入られてから、およそ40年。もともとは音楽の先生を志し、初任で赴任されたのが養護学校(現在の特別支援学校)でした。

そこで出会った子どもたちとの日々、そしてお別れの経験が、「ご家族と一緒にこの子たちの命を大切にしたい」という原点になったといいます。

その後、大学院に進まれる間に勤めた子ども発達支援センターでの7年間が、大きな転機になりました。健診後のお子さんと保護者を受け入れ、療育プログラムを組み立てる仕事です。そこで星山先生が選ばれたのは、親子を分離しない支援でした。毎週金曜日は、必ず親子で一緒に過ごす日。

「子どもだけを引き離して何かをして、親御さんだけに何かをして、本当にこの親子や家族を支えきれるのかなと、ずっと疑問でした」

センターでは、ほとんどのお母さんが涙を流していた。その涙をどうしたら支えられるのか。星山先生の関心は、子どもから「子どものまわりで一生懸命がんばっている大人を、誰が支えているのか」へと移っていきます。そして、親と子をセットで幸せにしなければ難しい、という結論に至られたそうです。

一人のお母さんから始まったこと

大学に移られてから、ある小学校で保護者向けの講演会を開くことになりました。タイトルは「発達障害の理解と支援」。広い体育館に椅子が並びましたが、来場したのは、たった一人でした。

その一人のお母さんが、講演後に伝えてくれたそうです。「このタイトルではだめです」。自分が通っている学校で、そのタイトルの会に行ったら、担任の先生にどう思われるか分からない。学びたいけれど、行く勇気が出ない——。

そこで星山先生は尋ねました。学校ではない場所で勉強会をやったら、学びたい人はいますか。「たくさんいます」。10人くらい集まったらやりましょう、と約束したところ、そのお母さんは、数十人の友人を連れてきたそうです。

これが、現在も続く保護者向けの学びの講座の始まりでした。大学院で現職の先生方に使っていたテキストを組み替え、1年かけて学ぶカリキュラムに。やがて受講された方々から「やめない」「自主研究グループをやりたい」「ケーススタディをやりたい」「自分に自信を持ちたいから資格を出してほしい」という声が上がり、初級・中級・上級へと講座が育っていきました。

さらに、学び終えたお母さんたちが「学校を助けたい」と言い始めます。当時は、地域の保護者が教室に入ることへの抵抗が強い時代でした。「お帰りください」と言われ、つらい思いをしながらも、最初の10人は誰一人やめなかったといいます。

「なぜそんなに一生懸命やるのと聞いたら、『過去の自分を助けたいんです』と言うんですよ」

20年を経て、この取り組みは自治体の事業として定着し、現在は多くの方が有償のサポーターとして地域の学校に入っているとのことでした。学びたい人の入り口と、地域で活躍する出口が、ひとつの仕組みとしてつながっていったのです。

「最初は点だったんです。それが面になっていった。違うものに出会ったときに戦うんじゃなくて、周りから手をつないで、あたたかく包もうよと言い続けました」

「グレー」ではなく、虹色で考える

星山先生のご講演の中心にあったのは、子どもの特性を虹の7色でとらえる考え方です。

書籍を示しながら虹色の特性について話す星山麻木先生
虹の7色で子どもの特性をとらえる考え方をご紹介いただきました

「グレーゾーン」という言葉への違和感から生まれた見方だといいます。黒と白の間のグレー、という表現では、どこかに「黒」と「白」があることになってしまう。そうではなく、人を色で表すなら、すべての色が含まれている虹色にしたい——。

「ご参加のみなさんも私も、どの子もみんな虹色で、ブレンド具合が違うだけ。濃い薄いは違うけれど、どの色もあって、それがみんな素敵なんだよ、と説明したら、自己理解が肯定的に進むんじゃないかと思いました」

当日は、7色の特徴を具体的にご紹介いただきました。一番になりたい正義感の強いレッド、内向的で感受性の豊かなグリーン、自分の世界を大切にするアクア、人のお世話が大好きでうっかりも多いオレンジ、活動量が大きく冒険が好きなイエロー、人と比べないおおらかなブルー、そして親子関係を映すパープル。

印象的だったのは、特性を「いい・悪い」で語らない姿勢です。たとえば、バスの並び順が変わると大きく混乱してしまうお子さんに対して、星山先生とお母さんが見つけた関わりは、「一緒に全力で悔しがる」ことでした。みんなで「残念」と言い合う。やがて落ち着いていったその子が初めて話した言葉は、「残念」だったそうです。

「感情を言葉にするのがとても苦手なので、そういう言葉を得ると、自分が分かってもらえる。ものの名前を教えるのではなく、イライラをどう共感して出してあげるかが、実は大事なポイントなんです」

ブロッコリーが食べられない理由を子どもたちに聞いてみた、というお話もありました。「先生はブロッコリーを見たことがありますか」と言われてよく見ると、表面に細かなトゲのような突起がある。感覚の敏感な子には、それが食感として分かってしまう。わがままではなく、生まれ持った感覚の違いなのだ、ということです。

こうした特性を理解し、その子が本当は何を言いたかったのかを「通訳」してくれる人のことを、星山先生はセーフパーソンと呼ばれていました。安心できる人、安心して隠れられる場所(セーフスペース)、そして安心できるもの(セーフグッズ)。この3つが地域に点ではなく面として広がっていくことが大切だと語られました。

「普通」とは何か。強みから先に伸ばす

後半では、発達検査の模式図を用いながら、同年齢との比較だけで子どもをとらえるのではなく、その子自身の得意なことや発達の特徴に目を向ける大切さをお話しいただきました。

発達の模式図を指しながら話す星山麻木先生
「とんがっているところに、エンジンがついています」

真っ白で同じ形であることが「普通」なのだとしたら、それはむしろつまらないことではないでしょうか——と星山先生は投げかけます。

そして、支援の順番について明確なメッセージがありました。

「とんがっているところ、自分の中で発達が早いところ、得意なこと、集中力の高いところを先に伸ばしてください。そこにエンジンがついています。苦手なところは後からでいい」

ゆっくりなところだけを取り出して「もう少しがんばれ」と迫るのは、本人にとって苦しい。みんなに合わせることが正義ではなく、その子に合った洋服を選び、その子らしい生き方を応援する。それが個別最適化であり、個別の教育支援計画の意味だ、というお話でした。

「他の人と脳が違うということは、その子が生きようとした証であって、ダメなことではなく、リスペクトの対象なんです」

質疑応答から

会の後半では、参加者のみなさまから質問をいただきました。

ノートにメモを取る参加者の手元
会場では多くの方が熱心にメモを取られていました

「個別最適化において、強みを先に伸ばすことが有効だという知見をもっと知りたい」という教育関係の方からの問いに対して、星山先生は、ある小学生のお子さんの事例をお話しくださいました。

学校が怖い、建物が怖いという状態から、家にも入れなくなってしまったお子さんでした。検査を受けてみると、記憶の一部に苦手さがある一方で、空間をとらえる力が極めて高く、建物の展開図を描けるほどの才能があることが分かりました。ご両親が初めて「こういうことだったのか」と理解されたそうです。

苦手なところを練習するのではなく、強みを使って記憶を残す方法に変える。そして、お父さんに「とにかく自然の中で一緒に遊んでください」とお願いしたところ、お父さんはお仕事をしばらくお休みして、お子さんと思いきり遊ぶ時間をつくられたそうです。お子さんは、すっかり回復されたといいます。

「何かに立ち向かう前に、傷ついてがんばってきた自分をケアする時間が必要なんです。安心して、親子でいい時間をつくってほしい。それが第一ステップだと思います」

「大人の方に、環境を変える勇気がないんじゃないですか。この子をどうしようかではなく、いい環境をどう選べるか、どうつくれるか。そこに視点を変えていただきたい」

この言葉は、私たちの活動そのものへの励ましであり、同時に宿題でもあると受け止めています。

これからのこと

講演会の後は、会場を開放し、参加者のみなさま同士で交流いただく時間を設けました。岐阜で居場所づくりや支援に取り組む方、学校現場の方、保護者の方、学生の方など、本当に多様な方にお集まりいただきました。

星山先生からは、「私がいつも岐阜に来るわけにはいかないので、こういうコミュニティで学び合えるかどうかが大事」というお話もいただきました。学びの機会をつくることと、学んだ人が地域で力を発揮できる場をつくること。その両方を、岐阜でどう形にしていくか。設立から1か月の私たちにとって、これからの大きなテーマです。

当団体では今後も、セミナーや講座・研修、学校・PTA・コミュニティスクールのみなさまとの対話の場づくりに取り組んでいきます。また、子どもにとってどのような環境が良いのかを調査・分析し、発信していくことも進めていきます。

子どもを変えるのではなく、環境を変える。この考えのもとで、小さな実践を積み重ねてまいります。ご一緒できることがありましたら、ぜひお声がけください。

岐阜市役所から望む岐阜の街並みと山
会場の岐阜市役所から望む、岐阜のまち

開催概要

名称設立記念講演会「あなたはあなたで大丈夫。」〜子どもの育ちを支える環境とは〜
日時2026年10月10日(土)13:30〜15:00終了後 15:30まで交流
会場岐阜市役所 12階 第1研修室〒500-8701 岐阜県岐阜市司町40番地1
講師星山 麻木 先生明星大学 教育学部 教授(保健学博士)
参加費無料
主催一般社団法人こども環境デザイン

ご一緒できることがありましたら

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